「先般」って、フォーマルな文書表現でよく見かけますが、敬語なのでしょうか?意味と合わせて教えていただけると…
読み方から、類語や具体的な使用例も含めて詳しく解説しましょう。
少しかしこまった文書表現などで、
先般、〜
なんていう言葉をよく見かけます。
こちらの記事では、この先般について、
- 読み方
- どれぐらいの期間をさすのか
- 先日、過日や今般との違い
「先般」の読み方と意味
先般の読み方はせんぱん
です。
大辞泉では、
と示されています。
- さきごろ
- このあいだ
- 過日
先般を「先」と「般」に分解して考えると、
- 先:時間的に前、あることより前
- 般:物事・種類
となります。
この2つの意味を考え合わせると、
先般は、
以前の出来事
のニュアンスを含むこととなり、
さきごろ、このあいだ、過日
の意味につながります。
「先般」は敬語?
先般は、例えば、
改まった場における冒頭のあいさつや、
かしこまった文章などで使われることはありますが、
日常会話ではあまり使われる言葉ではありません。
そうした使われ方のためか、
先般は敬語なのか?
という疑問を持つ方も多いようです。
結論から言うと、
先般は敬語ではない
です。
ただ、敬語表現ではないものの、
相手に丁寧な印象を与え、改まった雰囲気を醸す語であることから、
改まり語
として分類されます。
改まり語には、先般のほかに、
- いつも→平素
- 今日→本日
- あした→明日(あす)
- 忘れる→失念する
- いない→不在
- もう一度→再度
- どこ→どちら
- どんな→どのような
- 後で→後ほど
などがあります。
↓↓↓
https://the-right-manner.com/1769.html
先般の表す期間
先般がどれくらい以前までを遡って含んでいるか、実は、辞書等でその期間を明記しているものは見当たりません。
ネットでは、
長くても1か月以内
といった記載も見受けられますが、
例えば、こちらの外務省によるツイートですと、
【河野外務大臣によるパロリン・バチカン国務長官表敬】
— 外務省 (@MofaJapan_jp) 2018年11月23日
バチカンを訪問した河野外務大臣は,23日,パロリン国務長官を表敬しました。
河野大臣から,先般法王が明年の訪日の意向を表明したことを日本政府として歓迎する旨を述べました。https://t.co/iZSQQVf8rN pic.twitter.com/WBubLEqom2
ツイート:2018年11月24日
で、ツイート内で紹介されている、
「先般法王が明年の訪日の意向を表明」したのが、
2018年9月12日なので、
約2か月前の出来事を「先般」と表現していることになります。
また、こちらですと、
【☆SDGs×外務省×JC☆】
— 外務省✕SDGs (@SDGs_MOFA_JAPAN) 2019年1月19日
本日、京都で開催中の日本青年会議所(JC)京都会議総会に鈴木外務省地球規模課題審議官も登壇。
政府の取組を説明するとともに、先般のJCとの「タイアップ宣言」に基づき、JCと連携して #SDGs を広く全国に展開していく旨の決意を述べました。😠
SDGs、やりましょう!👉 pic.twitter.com/hPuG22adpx
ツイート:2019年1月19日
で、ツイート内で紹介されている、
「タイアップ宣言」が、
2018年9月14日なので、
約4か月前の出来事を指していることになります。
政府の公式ツイートからわかることは、
厳密に1か月などの期間を区切って使用されているわけではなく、
あくまでも、
「先般」を見た人が、
常識的にイメージできる期間内の出来事を範囲に含めている
と理解した方がよさそうです。
「先般」の類語
先般の類語には、- この前
- 先ごろ
- 先日
- 先だって
- この間(このあいだ)
- 先度
- 過日
- 過般(かはん)
- いつぞや
などが挙げられます。
この中でも、特に
- 先日
- 過日
といった言葉が
先般との使い分けがむずかしいものとしてよく取り上げられます。
そこで、この2つの言葉と先般との違いについて確認しましょう。
「先日」との違い
先日の意味は
- 近い過去のある日
- この間
- 過日
です。
この定義からも想像できますが、
先般が、以前の出来事を示しているのに対して、
先日は日にちのことを示している
という違いがわかります。
また、先日が示す期間も、
先般と同様の期間であるとの考え方をとっているサイトが大半を占めています。
さて、両者の使い分けについてですが、
実際のところ、
先般との厳密な使い分けはむずかしいのでは?
と感じています。
例えば、先ほどの外務省のツイートで考えてみると、
- 先般法王が明年の訪日の意向を表明したことを日本政府として歓迎する旨を述べました。 ↓
- 先日法王が明年の訪日の意向を表明したことを日本政府として歓迎する旨を述べました。
- 先般のJCとの「タイアップ宣言」に基づき ↓
- 先日のJCとの「タイアップ宣言」に基づき
どちらも、「先般→先日」に置き換えたところで違和感はありません。
使われる場面が政府の公式ツイートということで、
よりかしこまった場面であるという意味で、
先般の方がなじむといった程度
ではないでしょうか。
「過日」との違い
過日の意味は、- 過ぎ去ったある日
- せんだって
- 先日
となります。
先般との違いは、
先日と同様、日にちを示しているという点にあります。
多くのサイトでは、
先般や先日よりも、さらに範囲の広い日数を示している
とも紹介されていますが、
先のとおり、
実際には先般も4か月前の出来事を示すこともあるため、
範囲の広狭はあまり関係ないと考えられます。
実際に先般との使い分けを検討してみると、
- 先般法王が明年の訪日の意向を表明したことを日本政府として歓迎する旨を述べました。 ↓
- 過日法王が明年の訪日の意向を表明したことを日本政府として歓迎する旨を述べました。
いかがでしょう?
意味として間違いではないですが、
管理人としては、
政府ツイートのようなフォーマルな文章の場合は、
過日を使用することに違和感を覚えます。
ちなみに、実際の使われ方をTwitterで拾ってみました。
過日、当センター主催にて、腸内環境研究のトップランナー 佐々木淳氏の講演会を開催しました。
— 化学物質過敏症・対策情報センター (@mcs_bic) 2019年1月22日
今は「フローラ」扱いされている腸内細菌ですが、これが「ばい菌」扱いしかされていなかったころから、実践的研究を重ねてこられた方です。 pic.twitter.com/tJCOqZGafw
ツイートより4日前に開催された講演会についてのものです。
政府ツイートのようにかしこまった内容のものでなければ、違和感はありませんね。
「今般」との違い
「般」つながりの表現で、今般
という言葉があります。
今般の意味は
- この度
- 今回
- 今度
となります。
先般の意味は
・さきごろ
・このあいだ
・過日
ですから、
今般と先般の違いは、
意味を見てのとおり、
- 今般:「今」についての言及
- 先般:「過去」についての言及
であることがわかります。
先般と今般の違いをイメージで表すと下図のようになります。
「般」でつながるだけで、時制は全く異なることがわかりますね。
↓↓↓
工事中
「先般」の例文
先般の意味と類語との違いがわかったところで、実際に先般を使った例文を紹介します。
先般は主に
- 先般は~
- 先般より~
- 先般の~
といった使われ方がほとんどですが、
副詞的な言い回しで
- 先般~した
- 先般~された
といった使い方がされる場合もあります。
- 先般は大変お世話になりました。
- 先般の件、何卒よろしくお願い申し上げます。
- 先般よりご連絡差し上げていた件でご相談があります。
- 先般実施された〜。(副詞的用法)
- 先般申し上げました〜。(副詞的使用法)
などです。
先に紹介したツイートの他にも、
先般、九博の共同運営者である福岡県は、小郡カンツリークラブから、九博での展示・研究を目的とした文化財(伊万里焼を中心とする陶磁176件)の寄贈を受け、 1/15、株式会社小郡カンツリー倶楽部に、知事感謝状を贈呈しました。画像は寄贈された陶磁(一部)です。九博での展示をお楽しみに! pic.twitter.com/QsFZRdHovr
— 九州国立博物館 (@kyuhaku_koho) 2019年1月18日
先般引き込まれるように参拝した児玉神社でしたが先人の偉業に対して敬意を払うとともに終活の一環として生きた証を残したく奉納しました。今月いっぱい受付ているそうです。 pic.twitter.com/m1erHWa5fZ
— みっつたぬき (@mittutanuki) 2019年1月19日
などの使われ方がされています。
まとめ
先般、先日、過日、このあいだなど、よく似た表現があるんですね。でも使い分けもできそうです!
そうですね。意味の違いというよりも、口語やフランクな場面なのか、かしこまった場面や文書表現なのか、という視点で使い分けるといいですね。
まとめると、
先般は、
- 読み方は、せんぱん
- 意味は、「以前の出来事」のニュアンス
- 敬語ではなく「改まり語」
- 期間は、1か月などではなく常識的な判断で
- 先日、過日との違いは意味よりも使う場面にあり
でした。
それでは最後までお読みいただきありがとうございました。